紅葉巡りとお寺のお参り

今年は例年よりも秋が早かったですね。

この時期、紅葉のなかで映える京都のお寺のCMに旅気分を煽られますが、都内でも綺麗な紅葉が見られるお寺や、大きなイチョウの木があるのでご紹介します。

紅葉がきれいなお寺

【九品仏浄真寺(くほんぶつじょうしんじ)浄土宗〕

九品仏駅から徒歩2分 (東京都世田谷区奥沢7−41−3)

紅葉のトンネルと絨毯が知られる九品仏浄真寺は、駅を降りてすぐの参道から丁寧に整えられた仏像や立派な仏門やお堂の景色が相まって、静かな心持ちで散策できます。
テレビ東京「出没!アド街ック天国」では一位に輝いたというこのお寺は、地元の方が熱心に通われている姿も併せて、信心深い気持ちになりそうです。

【金剛寺・もみじ寺】〔真言宗〕

王寺駅から徒歩11分 (東京都北区滝野川3−88−17)

金剛寺周辺には、徳川八代将軍吉宗の命で植えられた楓が多く、金剛寺の手前にかかる朱色のもみじに型どられた橋や、門前の楓から今も「紅葉寺」として親しまれています。
弘法大師(空海)が彫ったという不動明王像もあり、規模は大きくないものの、歴史に想いを馳せて楓の風情が感じられるお寺です。

【高尾山薬王院】

高尾山駅より徒歩20分(東京都八王子市高尾町2177)

多くの天狗伝説や天狗信仰がある高尾山には、いくつかの紅葉スポットがあります。ケーブルカーから見渡す紅葉風景、迫力ある天狗の像が紅葉に映える姿は、他の季節とは違った趣です。

◇飯縄権現堂(御本社)

殿全体にわたり彩色彫刻で装飾した、華麗な社殿に紅葉が美しく映えます

◇仏舎利塔

特に綺麗に彩る紅葉の名所。権現茶屋の正面を上がったところに仏舎利塔が。

高尾山公式HP http://www.takaosan.or.jp/

【高源院】〔臨済宗〕

千歳烏山駅から徒歩19分 (東京都世田谷区北烏山4−30−1)

世田谷区千歳烏山にある「寺町通り」には、1923年の関東大震災で被害を受け移転してきた26の仏教寺院が並び、高源院はそのうちの一つです。区民が選ぶ“せたがや百景”に選定されている「烏山の鴨池」には鴨が飛来し、中央に浮かぶ弁財天堂は時を忘れるほど美しいです。

大きなイチョウがあるお寺

【善福寺】 浄土真宗

麻布十番駅から徒歩10分 (東京都港区元麻布1-6-21)

浄土真宗の開祖・親鸞聖人が地面に刺した杖が根付いたという伝説がある善福寺の大イチョウは、「杖イチョウ」とも呼ばれ推定樹齢750年以上で国指定天然記念物で都内最大。「逆さイチョウ」とも呼ばれ、多くの気根が垂れ下がっているため枝が逆さまに生えているように見える珍しい大木です。高さ20m、幹周10.4mの迫力は、霊木と呼びたくなる佇まいです。

【光福寺】浄土真宗

立会川駅から徒歩10分 (東京都品川区大井6-9-17)

善福寺の「さかさイチョウ」とは兄弟樹で区内の最大樹でこちらも天然記念物です。高さ40m、幹周り6.4mという巨木。明治時代までは品川の海で魚をとる漁師たちの目印にもなっていたというほどの大木です。実際に見上げてみたくなりますね。都内で紅葉が見られるいくつかのお寺をご紹介しました。

見学のマナー

とはいえ、神道にあたる神社は誰でもお参りしやすいですが、仏教はお寺によっては入りにくい雰囲気があるかもしれません。住職の住まいの雰囲気が強いお寺もありますし、「お墓を守ってもらっている檀家でもない人が、お寺って入っていいの?」そんな疑問がわきます。ほとけ便りが懇意にしてもらっている天台宗・西光寺のご住職、京戸慈仁さんに、お寺は檀家さん以外に入っていいものなのか伺いました。

「檀家の方以外でもお参りして大丈夫です。その際はお墓参りのお檀家さんへの心配りを忘れずにいて下さい。最近中高年の方々がグループでお参りに来るようになりました。本堂では(特に土日)ご法事があるので、本堂前は特に静かにお参りにして欲しいです。たまに法事中にもかかわらず拡声器を使って寺院説明をする団体がありますが、大変迷惑なことです。また、ペットを連れての散策は最低限のマナーを守りましょう。」

マナーを守ればお寺もお参りしてよい場所なのですね。必要があればお寺の方に「見学したい」とお伝えするとよいでしょう。歴史や仏教の心に触れることは、きっと仏様も喜んでくださることでしょう。美しいものを見たとき人は謙虚な気持ちになり、それが自然のものだった場合、その謙虚さはより純粋なものになります。紅葉という自然の巡りによる景色に、しばし日常の雑事は洗い流されるでしょう。自分の心の在り様を見つめられるのが、お参りのありがたい効用ですね。

ここで、簡単にお寺のお参りの仕方を確認しましょう。

お寺のお参りの仕方

  1. 山門(三門)の前で一礼。
  2. 手水舎(ちょうず・てみずや)で手と口を清める。
  3. 鐘楼がある場合は鐘を撞く(お参りの前に)。※自由に鐘をつかせてもらえるお寺の場合。
  4. お線香をあげて一礼。
  5. お賽銭を入れてお祈りをする。

門の前での一礼、手水、お賽銭、神舎のお参りと似ていますね。そう思うと、そもそも神社とお寺の違いがよくわからないという方も多いと思います。

似ている神道と仏教

日本独自の神道(神様)と、インド・中国からきた仏教(仏様)は、明治維新の前まで、1000年以上、それぞれが影響し区別なく一緒にされていました(神仏混淆といいます)。その名残により、神社と寺の違いがわかりにくく似ているように感じますし、その違いを意識せずに私たちは何となくありがたいもの、として受け入れお参りしています。この曖昧さは国民性として批判を受けることもありますが、人智を超えた自然や大いなる存在を感じることができる「心」は、宗教の区別を超えて大事なものだと思います。四季がある日本ならではの紅葉の季節、透んだ空気のなか、紅葉の絨毯を歩く音に耳をすましてみませんか。

ご紹介したお寺以外にも、ご近所に静かで特別な時間が過ごせるお寺があるかもしれません。どうぞ紅葉に誘われるまま、秋のお寺に足をお運び下さい。