「三心」で作るお正月の精進料理。|ほとけ便り

クリスマスのうきうきのすぐ向こうにみえるのが新年ですね。今回は、先日伺ってきた、台東区・宋雲院の「Tera De Maeche(テラデマルシェ)」で購入した自然野菜を使い、お正月にぴったりの精進料理をご提案したいと思います。

「自然野菜 のら」さんは、‟顔の見えるお客様に”と小規模の販売のみだそうです。さつまいも「紅あづま」と紅大根「もみじスティック」を買いました。

 

精進料理について

精進料理とは、仏教の戒律に基づき、殺生や煩悩への刺激を避けることを主眼とする料理。動物性食品を避け,植物性の材料のみを用いて作る。

 

料理も修行のひとつ

禅宗のうちの曹洞宗では、料理を含めて日常の行いそれ自体が、仏道の実践であるとされていて、料理すること・食事を取ることは特に重視されているそうです。道元禅師が開いた修行道場「永平寺」では、調理場の責任者は「典座(てんぞ)」として、禅寺の「食」を司る重責を担う役僧です。

個人的に、私は料理をする人の姿に弱いというか、好きというか、胸が打たれます。今の時代、料理を作ることは端折ろうと思えば端折れる家事です。(もちろん、介護食などを必要に応じて使うことはよいと思います)食事は全部外食か、お弁当や総菜、買ってきたものを食べるという生活スタイルの人が私の周りにも何人もいます。それを選ぶことが出来る時代ではありますが、本当の豊かさとは違うと思いますし、体への影響も心配です。私自身、以前は仕事や楽しいことに必死で食事を疎かにし体調を崩したことがあるので、余計に、食事を大切にしている人に頭が下がるのだと思います。

では、道元禅師が食生活全般について教えを書いた『典座教訓』から、料理を作るときに忘れてはならない三つの心「三心」を胸に留めて料理したいと思います。

 

料理のときの心がけ~三心(さんしん)~

喜心(きしん)」 作る喜び、もてなす喜び、そして仏道修行の喜びを忘れない心
老心(ろうしん)」 相手の立場を想って懇切丁寧に作る老婆親切の心
大心(だいしん)」 とらわれやかたよりを捨て、深く大きな態度で作る心

◇さつま芋と栗のレモン煮

さつま芋の甘さと、レモンの爽やかな酸味が合う一品です。栗が入ると、栗きんとんのアレンジ料理のようでとってもお正月向きですが、なくても十分美味しいです。冷やして食べると上品デザートのようにもなります。

≪材料≫

さつまいも(今回は紅あずまを使いました)

レモン

栗の甘露煮の缶詰

(味をみながら)みりん、砂糖

≪作り方≫

① さつまいもを1cm幅に切る。レモンの皮をむき、7cm幅に切る。
② 鍋にたっぷりの水を入れ、水から①のさつまいもをかために茹で、茹で汁を捨てる。
③ 鍋に②のさつまいもと①のレモン、栗の甘露煮(瓶の汁ごと)を入れ、かぶる位の水を加える。味を見て、甘味が足りなければ、砂糖やみりんを加えましょう。(今回は、さつまいもの甘味と瓶の汁だけで十分でした)紙蓋(クッキングペーパー)をし、コトコト静かに煮含める。

④ よい固さになったら完成☆

◇紅白大根のぬか漬け

ぬかは、たんぱく質、脂質、繊維質、カルシウム、リン、鉄、ビタミンA、B1、B2、ナイアシンを豊富に含んでいます。

生の野菜も、ぬか漬けにすればビタミンB2は3倍以上、ビタミンB1は10倍以上に増加するそうです。

最近、お米屋さんから譲って頂いたぬか床に、紅大根と白大根を漬けてみました。

紅白の大根が新年らしくてよい色合わせですし、もみじスティックのほっこりした風味が、ぬか漬けにも合っていました。

≪材料≫

ぬか床

大根(今回は紅大根「紅あずま」と白大根)

≪作り方≫

① 大根を10cm位の長さに切り、皮をむく。(今回は大根が短かったので6cm位で切りました)

② 沸騰したお湯で茹でる。表面が透明に透き通ったらあげる。

③ 2cmの厚さに切る。

④ ぬか床に漬ける。(今回の赤大根は、色がぬかにつくようだったので、後から別のぬか床に分けて漬けました)

⑤ 好みの漬かり具合になったら、食べやすく切って完成☆(一晩で十分おいしく漬かっていました)

◇紅七草がゆ

七草粥は、お正月で食べ過ぎた胃を休めるのによいハーブ効果のある精進料理といえます。
【七草:セリ・ナズナ・ゴギョウ(ハハコグザ)・ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ・スズナ(かぶ)・スズシロ(大根)】子供のとき、覚えた記憶がありますね♪

ぬか漬けにした紅大根(もみじスティック)の残りを使って、七草粥を想定したお粥を作ってみることにしました。大根から出た紅色が、お正月の余韻を感じられて、いつもと違う七草粥として楽しんでもらえます。風味も白い大根よりも強く、食べ応えがある口辺りでした。
≪材料≫ お米・水・塩・七草(今回は紅大根のみで作りました)

≪作り方≫

① お米、水、塩でお粥を作る。

② 細かく刻んだ七草を加えて煮る。(今回は紅大根のみ)

③ 紅大根の色が広がる紅粥の完成☆

まとめ

いかかがでしたでしょうか?
三心を忘れずに作ってみましたが、やはり、普段とは違った出来栄えとなりました。

◇いつもは、煮過ぎて煮崩れを起こしてしまうことが多いのですが、さつま芋をよいかたさに仕上げられました。

~素材をよく見て、集中して作る喜び-喜心

◇レモンをただ輪切りにしたまま鍋にいれるのではなく、種を取ってから煮ました。

~食べる人のことを想って丁寧に作る心-老心

◇紅大根の鮮やかな赤が、手やまな板に着きましたが、それを活かそうと、紅白のぬか漬けや紅粥を思いつきました。

~とらわれやかたよりを捨て、深く大きな態度で作る心-大心

「三心」の教えがいきた修行の時間となりました。年末年始、ご自分やご家族の為に、心をこめてお料理なさってみてはいかがでしょうか。

 

年内は、「ほとけ便り」をお読み下さり、ありがとうございました。

来年も引き続き、皆さまにほとけの心をお届けできればと思います。それでは皆さま、良い新年をお迎えくださいませ。