なんとも風流な四字熟語、「桜梅桃李(おうばいとうり)」とは？

寒さのなかにも、いたるところで風景に花の季節を感じることが増えてきましたね。

こんにちは、ほと子です。
今回は、春の足音が感じられる今日この頃にちなんで、花の香りがしてきそうな四字熟語を紹介します。「桜梅桃李」は、春の季節に咲く花が四つ並んだ四字熟語です。日常生活ではあまり見聞きすることがないかもしれませんが、実は仏教と関わりがある言葉なんですよ。

麗しい四字熟語「桜梅桃李」の言葉の意味や由来について、詳しく解説していきますね。

1,「桜梅桃李」という言葉の意味は？
2,「桜梅桃李」という言葉の由来は？
3,「桜梅桃李」の精神で現代を生き抜く
 4,　ほと子’s choice

「桜梅桃李」という言葉の意味は？

「桜梅桃李」は前から順に、サクラ、ウメ、モモ、スモモを指しています。仏教では、個々の当体を改めず、最高の個として成長するさまを「桜梅桃李」と呼びます。「桜梅桃李のそれぞれが美しい花を咲かせるように、他人と比べることなく自分自身を磨くことが大切だ」という教訓を含んだ言葉です。

桜には桜、梅には梅のよさがあります。
それぞれの花はオンリーワンの美しさなのです。自分が持っていないものに憧れて他人をうらやむのではなく、自分を愛し、自分の特性を活かす努力をしましょう。他人の真似ではなく自分らしく生きてこそ、人生をより豊かに過ごすことができます。

また一方で、どんなに頑張っても桜には桜の花、梅には梅の花しか咲きません。
これは、他人の性格や考え方をいたずらに変えようとするのではなく、相手のことを認めて受け入れようという姿勢に結びつくのではないでしょうか。自分と考え方が合わなくても、相手の意見に素直に耳を傾けましょう。また、無理に他人に合わせようとするのではなく、自分のできることに一生懸命取り組むことも大切です。

この考え方は、家庭内での子どもの教育や、職場での社員の育成にも応用できそうですね。
できないことに注目するのではなく、できる才能を伸ばすことで、家庭内でも人材育成にもよい循環が生まれます。

「桜梅桃李」という言葉の由来は？

桜梅桃李」の言葉の由来は、日蓮の言葉をまとめた「御義口伝（おんぎくでん）」に記載されている、「桜梅桃李の己己の当体を改めずして無作三身（むささんじん）と開見す」という文章が語源とされています。
「無作三身」とは、生命本来の「三身(法身・報身・応身)」をそなえた仏様の本質的な立場のこと。よって、ありのままという意味です。「法身（ほっしん）」は真理、「報身（ほうしん）」は智慧、「応身（おうじん）」は肉体を指しています。
つまり、桜梅桃李の木々がそれぞれに美しく咲くように、各々の体や個性を改めることなく、ありのままの姿で自己を活かしていけば、自分自身を輝かせることができる、と説いているのです。

また、「古今著聞集（こきんちょもんじゅう）」の「草木」の項では、「春は櫻梅桃李の花あり、秋は紅蘭紫菊の花あり、皆これ錦繍の色、酷烈の匂なり」として、「桜梅桃李」が使われています。「古今著聞集」は鎌倉時代に編纂された説話集です。「今昔物語集」、「宇治拾遺物語」とともに三大説話集に挙げられています。
「古今著聞集」は「神事」「祝言」「飲食」などの30編に分類され、「草木」の項はそのなかのひとつです。文中の「紅蘭紫菊（こうらんしぎく）」とは、秋を代表する紅い蘭と紫の菊のこと。春の桜や梅・桃・李も、秋の蘭や菊花も、それぞれの色や香りに独自の美しさがあると伝えています。

ちなみに「古今著聞集」のその後の文章は、「然（しか）れども昨開き今落ち、遅速異なると雖（いえど）も、風に隨（したが）ひ露に任せ、變衰（へんすい）遁（のが）れざる」と続きます。昨日咲いて今日散る花もある、変化と衰退は免れない、ということです。盛者必衰の歴史の歩みを表しているようですね。

「桜梅桃李」の精神で現代を生き抜く

「桜梅桃李」は仏教に関わりがある言葉で、己のままに日々高めることが大切だという意味であることが分かりました。

誰にでも自分にしかないよさがある。「個性」という大層なものに位置づけられなくても、あるがままの自分が素敵で尊いのです。多様性を認める現代を先取りしたような言葉ですね。

現在の社会生活において、既成の概念に押し込まれて窮屈さを感じている方もいるでしょう。反対に、「個性」や「独自性」が叫ばれる世の中に戸惑いを感じている方もいるかもしれません。そんなときは、この「桜梅桃李」を思い出して、肩の力をすっと抜いてみてくださいね。迷いなくその花を咲かせて散っていく美しい桜や梅と同じように、あなたはあなたらしく、そのままでいいんです！